夜勤で一緒になった同僚がインスタントのスープはるさめを食べていた。夕食はそれだけだという。「お弁当忘れたん?私、非常食持ってるよ」「ちゃうねん、いま節制中やねん」今月中に二キロ落としたいのだが、同居している親にバレないよう職場での食事を減…
職場の休憩室に東京土産のお菓子が置いてあった。同僚が連休をとって旅行に行ってきたという。「東京って意外と行く機会なくて、おのぼりさんしてあちこち観光してきたわ。月島で初もんじゃもしてきたで」すると、すかさず「どんな味やった?見た目通り?」…
大学時代の友人と焼き肉を食べに行ったら、懐かしい歌が流れていた。思わず顔を見合わせ、同時に「恋心!」と叫んだ。店のBGMは九十年代のヒット曲メドレーだったらしく、そのあとも「決戦は金曜日」「裸足の女神」「ロマンスの神様」「EZ DO DANCE」とつづ…
毎週土曜日の読売新聞夕刊に「もったいない語辞典」というコーナーがある。著名人が「使われなくなるのはもったいない言葉」を取り上げるリレー形式のコラムなのだが、昨日のそれは元NHKアナウンサーの村上信夫さんが「いただきます」について書いていた。 …
ばたばたしていて、昼休みに入るのが三十分遅れた……のはいいのだが、休憩室のドアを開けて、しまったと思った。先輩のA子さんがまた「オッサン、オッサン」と連呼している。オッサンとは彼女の夫のこと。彼がいかに不快でストレスを与えてくる存在であるかを…
昨春、病院勤務から訪問看護に移った友人がもう転職を考えているという。ステーションが二十四時間体制をとっているため、月に五、六回オンコール当番が回ってくる。それが苦痛でたまらないらしい。「いつ呼ばれるかわからないと思ったら、気が休まらない」…
仕事帰り、娘からLINEが入った。返事を打とうとして、彼女のアイコンが変わっているのに気がついた。うちにいる猫の横顔だったのがいつのまにか自撮り写真になっている。「えっ、顔出しはあかんやろ!」思わずつぶやいて……あれ?よく見たら顔が違う。娘のア…
しゃくりあげる自分の声で目が覚めた。枕の冷たい感触で現実に戻ったあとも、涙はしばらく止まらなかった。夢の中でも置いて行かれるのは私なのね。なぜ唐突に彼の夢を見たのか、理由はわかっている。フェイスブックでつながっている共通の知人から新年のあ…
伊集院光さんがパーソナリティを務めるラジオ番組で「捨てたもの」というテーマで投稿を募集したところ、「卒業アルバムを捨てた」という便りが一番多かったという。伊集院さんは、「捨てないものだと思い込んでるみたいなところがあって……」と驚いたそうだ…
バスに乗っていたら、後ろの人の会話が聞こえてきた。「秒で返したのに既読がつかないってどういうこと?自分が送信した瞬間にトーク画面を閉じてるわけ?」「いるよねー、いまのいままで携帯触ってたのになぜか一時間も二時間も未読のままになる人。ぜった…
めずらしく定時上がりできた夜勤明け、バスを降りて時計を見たら十時二十分。「あら、まだこんな時間」とうれしくなり、マクドナルドで朝マックをすることにした。若い女性三人組の隣に座ったら、先日再婚を発表したタレントの新山千春さんの話で盛り上がっ…
以前から不思議に思っていた。彼女とは夜勤入りのときにロッカールームでよく会うのだが、いつも「いったい何泊するの?」と訊きたくなるくらい大荷物なのだ。その日も私のトートバッグの三倍はあるスポーツバッグをかついで病棟に上がろうとしていたので、…
昨日のこと。息子の校外学習の写真を申し込もうと撮影業者のサイトにアクセスしたら、「顔認証機能」なるものがあった。ほんの数秒で全写真の中から息子が写っているものだけを表示してくれて、びっくり。何年か前までは教室や廊下に掲示された写真を見るた…
通勤電車で、斜向かいに座っている女性に目が留まった。スマホを見つめている人がずらり横一列に並ぶ中、彼女だけが本を読んでおり、さらにそのブックカバーがレトロな雰囲気でおしゃれだったのだ。店名らしきものが英語で書かれているが、読み取れない。ど…
同僚のA子さんは車通勤であるが、夜勤のときは夫が送り迎えをしている。「自分で行くからいいって言っても、帰りに眠くなったらどうするんだってきかないんだよね」と彼女が言うと、「愛されてるなあ!」「だんなさん、なんでそんなに優しいの」と声があがっ…
「それもあって、ちょっともやもやしちゃって。私の心が狭いのかな」と同僚が言う。夏休みに彼女の息子の友だち二人が泊まりがけで遊びに来たという。その日彼女は夜勤明けであれこれ料理を作る暇も体力もなかったため、夕食はカレーにしようと思っていた。…
ふだんスマホをほとんど使わない私であるが、最近アプリで漫画を読む楽しみを知った……という話を少し前に書いた。『ドラゴン桜』を読み終わり、いま読んでいるのは『静かなるドン』だ。表の顔は女性物の下着メーカーに勤めるさえないデザイナー、その正体は…
同僚のスマホの待ち受け画像は家で飼っているトイプードルだ。ペットショップのショーケースに、でかでかと「SALE!」と書かれた紙が貼られている犬がいた。ほかの子よりひと回り体が大きい。元の値段の半分にまでなっているのを見て、彼女は「これでも買い…
ふだんからスマホをあまり使わない私であるが、最近、ちょっとした楽しみを見つけた。漫画アプリで漫画を読むことだ。いま読んでいるのは『ドラゴン桜』。経営破綻状態となった私立龍山高校の運営問題を請け負うことになった弁護士・桜木建二は、学校再建の…
その記事に三つ目の誤字を見つけたとき、指が自動的にブラウザの閉じるボタンを押していた。ネットニュースを読んでいると、ときどきこういうことがある。どこよりも早くアップしようと、タイトなスケジュールで書かれたのだろう。しかし、文脈から正しい変…
このところ、芸能人が大学や大学院に入学したという話題をネットニュースでよく見かける。高校を卒業して就職する人より進学する人のほうが圧倒的に多いから、鈴木福くんや本田望結さんがどこそこ大学に入学と聞いてもへえと思うくらいだが(芦田愛菜さんは…
同僚の話である。あるファミリーレストランの宅配サービスを利用したら、うちの一品に小さな虫が入っていた。公式サイトの問い合わせフォームから写真を送ったところ、すぐに電話がかかってきた。商品の回収に行ってもよいかと訊かれ、すでに処分したと伝え…
昆虫食についてのテキストを書いたら、元同僚のことを思い出した。 彼女は私が人生で初めて出会ったベジタリアンで、卵や乳製品も摂らないヴィーガン(完全菜食主義者)である。私はそれまで、菜食生活をしている人たちが肉や魚を口にしないのは美容や健康の…
入浴介助を終えてナースステーションに戻ってきたら、何人かが集まってなにやら騒いでいる。どうしたのかと思ったら、床に大きなクモが一匹……とその後ろから虫駆除スプレーを構える同僚が。「えっ、クモは益虫だから殺しちゃだめって言わない?人にはなんに…
デート代、なんで男が払わなくちゃいけないのって言葉 女性はそのデートのために準備して洋服、メイク、美容代も入ってると思う 全部安くない。リップだってブランドなら4000円はする 可愛いって言って欲しくて、そのためにすごく早起きして準備してる それ…
夜勤で午後に出勤したら、待ってましたという感じで仲良しの同僚がやってきた。「〇〇さん、異動だって」今朝の朝礼で発表があったらしい。循環器病棟で退職者が出て、さらにもうすぐ産休に入るスタッフがいるという話は聞いていたから、どこかの病棟から補…
若い同僚が新ドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』の視聴をギブアップしたという。彼女はヒロインと同じ九州の地方出身なのだが、その方言が聞くに堪えなかったらしい。同じドラマを見ている別の同僚が、「あなたも地元の友だちとしゃべるときは、自分のことを『…
新型コロナ第八波の真っ只中、スタッフにも陽性者が次々に出て、年末年始の病棟は目が回るほどの忙しさだった。でもなんとか乗り切ったね、ほんとがんばったよね、とみなでねぎらい合っていたら、ひとりが言った。「私、退職したら毎年お正月はハワイで過ご…
読売新聞の「小町拝見」欄で、タレントの光浦靖子さんのコラムを読んだ。三十代の頃、「いい歳してみっともない」と思われるのが怖くて恋愛に踏み込めなかったが、四十代になったときに「三十代なんて“いい歳”ではなかった」と気づいた。そして五十代のいま…
私は作家のエッセイを好んで読む。で、誰のエッセイでもお目にかかるのが「〆切りが迫っているのに、どうしても書けない」という話だ。あるとき、林真理子さんはある有名歌手からヒップホップの作詞を依頼された。「メロディを口ずさめば詞は浮かんでくるだ…