猫・ペット

カバンの中の「そんなもの」

以前から不思議に思っていた。彼女とは夜勤入りのときにロッカールームでよく会うのだが、いつも「いったい何泊するの?」と訊きたくなるくらい大荷物なのだ。その日も私のトートバッグの三倍はあるスポーツバッグをかついで病棟に上がろうとしていたので、…

ペットの幸せってなんだろう。

同僚のスマホの待ち受け画像は家で飼っているトイプードルだ。ペットショップのショーケースに、でかでかと「SALE!」と書かれた紙が貼られている犬がいた。ほかの子よりひと回り体が大きい。元の値段の半分にまでなっているのを見て、彼女は「これでも買い…

金魚すくいの哀れ

仕事の行き帰りに通りがかるマンションには小さな池がある。直径五、六メートルの人工の水場だ。昨日もいつものようにその横を通り過ぎようとしたら、年配の男性が柵から身を乗り出すようにして水面を眺めているのに気がついた。なにを見ているんだろうと目…

定年退職したら、したいこと

四、五十代となると、定年退職後の生活を想像することがあるという人は少なくない。昼の休憩室で、同年代の同僚と「定年になったら、なにがしたいか」というテーマで盛り上がった。「老後は好きなだけゲームをする。認知症予防にもなるし」と誰かが言ったら…

ペットの不幸と喪中はがき

同僚の話である。毎年かならず元日に年賀状をくれる知人から今年は届かず、体調でも悪いんだろうかと気にしていたら、しばらくしてはがきが届いた。十二月に長く飼っていた犬を亡くし、新年のあいさつを控えていたことを知らせる内容だった。会ったこともな…

クラウドファンディングと違和感

同僚の話である。彼女は一年ほど前に、クラウドファンディングで「訪問看護ステーションを開設したい」というプロジェクトに出資した。しかし、お礼のメッセージが届いてから活動報告があったのは数回で、春以降はなしのつぶてだという。計画では六月開設と…

ペットを理由に仕事を休めるか

夜勤明け、ナースステーションで朝の点滴準備をしていたら電話が鳴った。この時間にかかってくる外線はたいていスタッフからの急な欠勤の連絡だ。私が手を離せないのを見て、早めに出勤していた日勤の看護師が電話を取ってくれたのであるが、途中から相槌の…

うちの子になってね(後編)

※ 「うちの子になってね(前編・中編)」のつづきです。 ちょこんは二日二晩、三段ケージの中で鳴きつづけた。それも、一段目に置かれたトイレの砂の上に座り込んで。猫は緊張や不安が強いとき、狭くて暗いところに隠れようとする。四角い小さなトイレは、ち…

うちの子になってね(中編)

※ 「うちの子になってね(前編)」のつづきです。 むしむしと気温の高い朝だった。リビングの掃き出し窓の雨戸を開けると、ちょこんはいつものように庭にいた。「おはよう。今日も暑くなりそうだね」と声をかけ……ん?数メートル離れたところにいるちょこんの…

うちの子になってね(前編)

その猫が初めてわが家の庭にやって来たのは、一昨年の末のことだった。外が薄暗くなり、雨戸を閉めようとリビングの掃き出し窓を開けたところ、ツバキの木の根元に黒っぽいかたまりが見えた。なんだろうと目を凝らしたら、黒と茶が入り混じった毛色の猫が一…

命の衝動買い

知人の話である。出張から帰宅すると、見知らぬ犬が家の中を走り回っていた。驚いて立ち尽くしていると、「ねえ、かわいいでしょう!」と妻の声。なんでも、遊びに来ていた孫を連れ、ペットショップに金魚の餌を買いに出かけたところ、ショーケースの中に一…